SKATEBOARDING

早すぎる死を迎えた伝説。「About Dylan Rieder」

更新日:

自分のイメージや魅せ方に並ならぬこだわりを持ち、決して妥協を許さないスタンスを守り続けた男。

 初めてディラン・リーダーの存在を知ったのは、たしか’06年にリリースされたTWS『A Time to Shine』に収録されたラストパートだったと記憶している。まだRasa Libreに所属しており、"ゴールデンボーイ"と呼ばれるアップカマーとして注目を集め始めていた時代。そして、Rasa Libreの一時的な解散とともに、Alien WorkshopがAVEを通して彼を獲得。前述のパートをきっかけにプロに昇格させた。

 ここからが、ディランにとって本格的なキャリアのスタートとなった。’09年には『Mind Field』で素晴らしいパートを披露。その翌年にはGRAVISのオンラインパート"Dylan."。そしてAlien Workshopを去り、絶対的な信頼を寄せたAVEとディルが立ち上げたFAに移籍。さらにはSupremeの初フルレングス『cherry』で、超人的なスキルと優雅すぎるスタイルで世界中のスケーターを魅了した。

 かつて所属したGRAVISからは、ドレスシューズを取り入れた前代未聞のモデルをリリースし、スケートシューズの既成概念を叩き壊すという偉業を成し遂げた(その概念は、ディランの死後もHUFからリリースされ続けている彼のシグネチャーモデルにしっかりと受け継がれている)。周りがどう思おうが、独特なセンスで我が道を貫き通す強い精神と姿勢が彼の魅力だったように思える。

 2014年にはDKNYのキャンペーンにカーラ・デルヴィーニュやA$AP Rockyとともにモデルとして起用されて大きな話題を呼ぶが、そのような仕事を受けたのはこれが最後だったという。その前年にはVogueにて数々のセレブとともにファッション撮影に参加するも、業界の大御所フォトグラファーの「スケーターらしくジャンプしてくれ」というリクエストを完全に無視し、現場の空気を凍らせたという逸話が残っている。

 ディランというスケーターのプライドとして、偉そうなオヤジに人形のように操られるのが許せなかったのだろう。また、21歳の頃には、あるブランドからファッションモデルとして$40,000という高額なギャラを提示されるも拒否。その当時に所属していたアパレルブランドのAnalogに至っては、自分の名前が載せられた洋服の素材とクオリティが気に入らないとし、$300,000近い年間のギャラを放棄して、ブランドを去ったこともあったという。それからアパレルブランドに所属したことは一度もない。ディランは、自分のイメージや魅せ方に並ならぬこだわりを持ち、決して妥協を許さないスタンスを守り続けたのである。

 そんなディランが、10月12日に白血病により引き起こされた合併症によってこの世を去った。息を引き取る前の病床では大切な仲間に囲まれ、それぞれがディランの手を取り、彼の身体に手を当てていたという。代わる代わる病室に入り、言葉をかけ続けていたという。ディランが息を引き取った日も、病院の待合室ではプロスケーターや著名モデルなど、20人以上の仲間が雑魚寝状態でディランの容態を心配し続けていた。

 隅でひとり泣く者などおらず、全員が食べ物や飲み物を持ち寄って支え合っていた。そして、病状が悪化して峠を迎えるも、ブティックであるHUNTをともに営んでいたパートナーや親友、中学時代からの恋人がニューヨークから始発のフライトで駆けつけるまで、24時間も心臓を止めることなく、ようやく到着した彼らに見守られながら最後の息を引き取ったのだという。

 ディランはスケートをするために生まれてきたといても過言ではない。その証拠に、彼の人生は、物心がついた頃から28歳という早すぎる死まで、そのすべてがスケートに捧げられたものであった。スタイル、ルックス、そしてパワー。誰もが羨む才能をすべて持ち合わせたスケーターは後にも先にもディランだけだろう。彼がスケートコミュニティに残したレガシーは永遠に語り継がれ、これからも生き続ける。

Dylan Rieder/
1988年5月26日〜2016年10月12日。スタイル、ルックス、パワーなどすべてを備えたスケーターとして、いまなお絶大な人気を誇る。代表作はAWS『Mind Field』、GRAVIS『Dylan.』、Supreme『cherry』など。白血病により28歳という若さで他界。

カメラ:Hideaki SAKURAI
媒体:SLIDER 29

-SKATEBOARDING
-

Copyright© CUCUMBER MAGAZINE , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.