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週末名画座 第5回『箱入り息子の恋』真面目さとはなにか

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金曜日、その週を思い返すのにピッタリな映画を提案する、『週末名画座』。仕事終わりの深夜、うとうとしはじめた頃が上映時間です。

『箱入り息子の恋』(制作:2013年/ 監督:市井昌秀 )

引用元:amazon

まあ、上司に無断で早退しちゃだめだよなあと思いつつ、先週のこのニュースはちょっと悲しかったりもした。

「バスに乗りたかった」 5分前に無断早退147回の職員処分 埼玉・川口市

上司の許可を得ずに早退を繰り返していたとして、埼玉県川口市は28日、生涯学習部北スポーツセンター主査の男性職員(41)を減給10分の1(1カ月)の懲戒処分にしたと発表した。


https://mainichi.jp/articles/20190629/k00/00m/040/028000c

真面目って難しいなと思う。もしこの人が15分早く会社にいたら、トータルの時間的に長く働いているじゃないか。むしろ残業ならぬ早業をしていた!ということはないのだろうか、とか。けれどいつも5分だけ早く帰るのを見ていたらイライラするのかもとか。そもそも、この男性がどんな勤務態度だったのかなんて全く分からないし議論しようがないかもしれないけれど…とか。ていうかむしろ真面目じゃなきゃ毎日きっかり5分前なんかに帰れないよな、とか。

どれも答えはないけれど、なんとなく気になってしまうこのニュース。まあ情報の少なさもあるだろう。なにより市役所という真面目そうな公務員職だからこそ、よりモヤッとしてしまうのかもしれない。そんなとき、ふと思い出したのがこの『箱入り息子の恋』という映画だった。多分、この主人公が公務員でまじめだったから、という短絡的なことでつながった。

引用元:シネマシティニュース

内気な性格で市役所に勤める天雫健太郎(星野源)は、35歳にもなって女性と付き合ったことが一度もない。実家と職場を往復するだけの日々(それも定時きっかりに帰る)を両親は心配して、子どもの結婚相手を探す代理お見合いに参加し、奈穂子(夏帆)とのお見合いを決めてくる。お見合い当日、緊張するなか健太郎は生まれて初めて恋に落ち、好きという感情に背中を押され奮闘するが…というストーリー。

引用元:ウラシネマイクスピアリ

この主人公っていうのが、全然覇気がないし、仕事への意欲も大してない。ゲームして亀をめでているだけ。けれど彼女に会って、彼女の両親に認められるためにめちゃくちゃ頑張るのだ。市役所で初めて昇進したいって思ってがんばってみたり、惹かれ合う彼女と不器用ながら関ってみたり。(この様子がまたかわいい、菜穂子は後天的に目が見えないがゆえにサポートが必要だったりもして、それをあわあわしながら手伝う様子もまた愛らしい)

彼が頑張りたいと思った動機は、まさしく恋。恋愛が動機なんて不純かもしれないけれど、けれど一番大きな原動力のひとつでもあるよなあ、と当たり前なことに感心してしまう。彼女との関係は困難なことも多くて、観ているほうが挫けそうになることもあるけれど、そこは真面目が故の実直すぎるほどの、ひたむきさと狂気が彼を推し進めている。これは星野源が演じるからこそより迫力があるのかもしれない。(実は彼の初主演映画でもあるらしい)

愛しすぎたが故に、少しずつ狂気じみていく最後のクライマックスは観る人によって印象が違うかもしれない。私はちょっと引いてしまった、けれど、ちょっとおかしくて、いとおしさも感じた。これまで真面目さと実直さをこれでもかと示してくれた主人公だからこそ、そのあたたかな感情を抱けたのかもしれないとも思う。

自分の性格を鑑みると、決して真面目とは言い難い。だから、仕事を毎日5分早く切り上げてバスに駆け込むマメさも、その回数を147回分控えておいてちまちまと記録しておく几帳面さも、好きな人と一緒にいるために昇進しようとするまっすぐさも、諦めずに誰かを想う強さも持ち合わせていない。
真面目であること、何かと向き合うということをあまりかっこいいと思っていないけれど、この映画を観ると、それができる人にだけ目にすることできる景色(あるいは狂気)もあるのかもしれないなと少し寂しい気もするし、そんな狂気とは一生縁がなさそうなことに少し安堵を覚えたりもする。

ここまで考えてると、ある意味、冒頭で引用した区役所の5分早引きニュースも、真面目さと真面目さがぶつかった結果なのかもしれない。毎日真面目に、同じ時間にきっかり仕事を切り上げる職員VSそれを毎日真面目に記録していた職員。まあこんな結び方まったくもって乱暴で見当違いなのかもしれないけれど、意外と想像に容易いなあと思うのは私だけだろうか。そしてその戦いの末、このどうでもいいような、けれどどうでも良くないようなニュースが全国で報道された。もしそうなら…やっぱり真面目じゃなくてよかったなあと思う。

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