CULTURE

週末名画座 第2回 『舟を編む』真摯に言葉と向き合うこと

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金曜日、その週を思い返すのにピッタリな映画を提案する、『週末名画座』。仕事終わりの深夜、うとうとしはじめた頃が上映時間です。

『舟を編む』(制作年:2013年/監督:石井裕也)

今週、ふと思いついたのは作家・三浦しをんの小説が原作となった『舟を編む』だった。比較的最近の映画だから、劇場で観たという人も少なくないのかもしれない。

ストーリーは、松田龍平が演じる馬締(まじめ)が言葉に対するセンスを買われ辞書編集部に配属、『大渡海(だいとかい)』という辞書の編纂に取り組む。そのなかで言葉と向き合い、人と向き合い、一冊を編み上げるまでの果てしない歳月を描くというもの。宮崎あおいとの恋愛や、オダギリジョーとの友情、そして自身との葛藤…馬締が歩む人生は、とても美しいが、ある意味平凡とも感じる。彼自身だけを取り上げたら、なんてことないけれど素敵な人生映画になるだろう。けれどそこに”辞書”という、分厚く厄介なものが共に歩む。

引用元:https://www.netflix.com/jp/title/70298943

この映画でいうまでもなく名シーンといえるのは、馬締が担当した『恋』という言葉の語釈だ。馬締は宮崎あおいが扮する香具矢(かぐや)に抱く自分の恋心に戸惑い、『恋』という言葉の表現にも悩む。そして彼がその言葉をやっと説明できたとき、その恋も進展を迎える。 言葉と人が結びついていることをわざとらしすぎるほどに、けれど美しく描いている場面だと思う。

引用元:amazon

この映画を観ると、普段何気なく目にしたり、使用したり、漬物石になったりしている辞書が、こんなにも工程と歳月をかけ編纂されているのか、というあまりにも当たり前な驚きに出会う。言葉を我々の日常から採集し、選び、語釈をつけ並べていく。しかし時間を有するあまりに古くなってしまったり、一般的でなくなったりする言葉もある。言葉が人々と一緒に移ろう限り、このいたちごっこは永遠に続くのだろうなと想像すると途方もない。

今は、言葉の一つ一つに細心の注意を払い、みんなが発信をしている時代だ。誰も傷つけないことは大切だ。誰かを刺激しないことも大切だ。けれどそういう注意力とはまた違った、言葉が持つ豊かさを吟味してみたくなる。SNSで気軽にポストできるようにはなったけれど、本当は言葉が持つ重みは変化していないと思う。自分の気持ちを誰かに伝えたいと思うとき、人は言葉の豊かさに頼らざる得ない。

引用元:amazon

さて、前述で印象的なシーンを語ったものの、今週(というか最近)と結びつく個人的に印象的なシーンはたぶん別にある。それは、あるタイミングで誤植を見つけるシーン。さまざまなことが本当になったり嘘になったり、ないことになったりする時代だけに、登場人物たちがとる行動はあまりに眩しい。そしてこれまで時間をかけて自分が積み上げたものを、もう一度見つめ直すことのしんどさに心が痛む。けれど、それをしてこそ彼らの辞書は完成し、言葉の海を渡る船として、人を乗せていく。まさしく今の教訓のように感じる場面だなあと思う。

■netflix/ https://www.netflix.com/jp/title/70298943
■amazon/https://www.amazon.co.jp/%E8%88%9F%E3%82%92%E7%B7%A8%E3%82%80-%E9%80%9A%E5%B8%B8%E7%89%88-DVD-%E6%9D%BE%E7%94%B0%E9%BE%8D%E5%B9%B3/dp/B00E8F42HK

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